2013 World Championship Trials - 2013年 世界選手権 トライアル
CASCADES MTB PARK - Pietermaritzburg, South Africa
 カスケイデスMTBパーク - ピーターマリッツバーグ、南アフリカ共和国

2013/08/26-2013/9/1
 前年の2012年の成績により選ばれた強化選手と、全日本選手権/Jシリーズの成績により、「協会特別推薦枠」として選出された選手の中から、7名の選手が2013年の世界選手権・トライアルに挑戦しました。

日本チームにとってはアフリカ大陸 という未知のゾーンでの大会。季節は冬のはずが、最高気温は30℃ (最低気温は10℃以下)という現地の気候や、現地での生活環境に関しての情報の少なさなど、少々戸惑いつつも、選手達はそれぞれに準備を行って現地に赴きました。

20/26インチそれぞれの予選/決勝と、4日間に渡って開催される世界選手権。トライアルの初日は8/28、20インチカテゴリーの予選が行われました。
午前中のジュニア20カテゴリーにエントリーした甘利、飯沼は昨年からの成長を感じさせる走りを見せてくれました。集中しつつも硬くなりすぎない状態で着実にセクションをクリアし、1ラップ目には甘利4位、飯沼7位と上々の成績。
しかし、2ラップ目に入りセクションの攻略方法を理解して上位の選手達が点数を減らしてくる中、二人とも点数を増やして甘利7位、飯沼9位。予選通過の8位以内に何とか食い込めるか?という状況での3ラップ目は、2ラップ目より点数を減らす事は出来ましたが、最終的に甘利9位、飯沼10位と、予選突破にあと少し届きませんでした。

1ラップ目のスコアは、地力の証。誰だって様子を見ながらのトライになる中で良いスコアが出たのは、それだけ経験値を有しているということ。また、緊張などで体が硬くならない落ち着いた精神状態を作れたということ。

小柄な甘利にしても、長身な飯沼にしても、身体能力でヨーロッパの選手に大きなアドバンテージを取られている中で、1ラップ目に良いスコアが出た事は彼らの技術や経験値が十分に世界に通じるという事の証明であったと思います。
集中力のOn/Offを覚えて、長時間の競技に対応できる事。また、多くの選手が疲れから点数を詰め切れない3ラップ目であっても、本来の走りが出来る身体的な持久力。これらが備われば、来年(二人とも来年は19歳)のエリートカテゴリーにおいても十分に戦える事でしょう。
ほとんどのセクションを走り切れなかった昨年から比べれば、格段の成長を遂げた二人に拍手です。

8/28の午後は、エリート20カテゴリーの予選。
昨年は予選通過⇒決勝6位の成績を出した寺井は、既に各国の選手から注目される存在。また、昨年は11位で、あと少し予選通過に届かなかった柴田、二人共やや緊張した様子での競技スタートとなりました。
冬とはいえ、日中は30℃を超える陽気の中、1ラップ目を終えて寺井3位、柴田6位(ただし同点が5名)と、混戦の中上々の滑り出し。
しかし、世界選手権という特殊な状況に加えて、不慣れな長時間の競技(6セクションx3ラップ)。セクションの難易度としては、二人にとって何も問題無い設定でしたが、やはり中盤は疲れが出ている様子でした。セクションにトライ中にも静止して一息つき、集中力や体の状態をコントロールして走り切った寺井は最終的に4位で決勝に進出。対して柴田は些細なミスが目立ち、点数を詰め切れずに13位となりました。
柴田もジュニアの二人同様、1ラップ目の点数は世界のトップ選手と肩を並べていました。ガチガチに体が固まった選手もいる中で、最初から本来の柴田らしい走りが出来ていたと思います。長時間の競技大会を走りぬく集中力のコントロールと持久力が備われば、決勝進出は十分に可能であると思います。
浮彫となった課題に取り組み、来年の決勝進出に向けて頑張って欲しいと思います。

翌日、 8/29は26インチカテゴリーの予選。 日本からは長屋、西窪の二人がエリート26にエントリーしました。
二人とも初の世界選手権という事もあり、右も左もわからない状態での競技。緊張から体は固まり、セクションの中でも正常な判断が出来ず、長屋22位、西窪25位という結果に終わりました。
経験の不足、イメージ作りの不足、トレーニングの不足、準備の不足…。足りない物を数えればきりがない大会でしたが、世界選手権で戦う為に何が必要であるか?を十分に理解出来た事でしょう。
昨年の世界選手権の後に大きな進歩を見せたジュニアの二人の様に、今年の経験を活かして来年の世界選手権では大きなステップアップを見せて欲しいと願うばかりです。

翌日、8/30は20インチカテゴリーの決勝。
予選は行われず、いきなり決勝となるウィメン(女子)カテゴリーに、日本から水野がエントリーしました。
史上初となる世界選手権トライアル・女子カテゴリーへの日本からの参戦。水野自身、実力が足りない事は理解した上で、それでも世界の舞台を経験したいという想いで参戦を決意しました。
結果は9位。それでも、セクションを目の当たりにしてから競技に至るまでの数日間や、競技の日の朝の緊張感。目いっぱい走った決勝での2時間30分。世界選手権から多くの物を得た様子でした。競技者としての成長、来年の飛躍を期待したいと思います。

ウィメンカテゴリーの決勝が行われた日中は天候に恵まれましたが、ジュニア20の決勝が行われる夕方には雨が降りはじめ、セクション全体をしっとりと濡らします。丸太や岩を用いて作られたセクションは、雨に濡れれば必然的に滑りやすくなるのに加え、アフリカの野生動物を模して障害物に施されたペイントは一段とタイヤのグリップを損ないます。
加えて、エリート20に先だって行われたジュニア20の決勝で選手達が走行したことで、雨で緩んだ赤土が泥となり、セクションの障害物にまんべんなく塗りつけられた状態でした。
選手達が主催者に対して延期を申し入れる程の悪コンディション中、競技はスタートしました。

緊張からかやや体が硬い寺井。不運に見舞われたり、些細なミスで点数がかさみます。1ラップを終えて合計19点。他選手と比べて大きく出遅れた感のある点数でした。
しかし、全8名が1ラップを走り終わった所で4位。他選手達も同様に苦しい戦いを強いられていました。
気合を入れ直して2ラップ目に挑む寺井。1ラップ目より格段に良い動きで6つのセクションを走り切りました。

結果は4位。2ラップを終えて合計30点。3位のベニート・ロスとは同点ながらも、「0点」の数で優劣が決しました。 あと一歩、表彰台に届きませんでしたが、寺井が世界のトップ選手の1人であること、そしてあと一歩の為に何が不足しているのか?という課題を確認できました。

また、寺井の競技中、日本チーム総出で彼のサポートを行いました。
傘をさす者、タイヤに詰まった泥を落とす者、ドリンクを差し出す者。そして皆で声をかけ、チームが一丸とって世界の舞台に挑んだ瞬間でした。

悔しく無いわけは無いけれど、 多くの事を学び、多くのものを得る事が出来た大会でした。



今年世界選手権に挑戦した7人の選手の更なる飛躍を望みつつ、その為のバックアップや来年の世界選手権に挑む選手達が充実した遠征を行い、万全の態勢で競技に挑める環境づくりを目標に、我々協会も一層の精進に励みたいと思います。