翌日に開催されたジュニア26には塩アが出走。
イギリスのジャック・カーシー、フランスのニコラ・バリー、ドイツのドミニク・オズワルド等、近年では16歳(カデットカテゴリー)ながらも世界選手権に参戦し、トップ選手と互角の走りを見せるケースも珍しく無い。今年も14名の選手の中、塩アを含む5名が16歳での出走となった。
やはり経験の不足は否めない。ワールドユースゲームには4度の出走経験のある塩アも、緊張感の漂う世界選手権の舞台に圧倒され、本来の実力を発揮できずにいた。他16歳の選手達も苦戦する中、同じく16歳、フランスのノア・コルドナが2位に入るという健闘を見せた。
彼自身の実力はもちろんであるが、それをいかんなく発揮できるのは多くの先達の経験をたくさん取り込める事や、ワールドカップに参加してきた経験があればこそであろう。
塩アの結果は14位であったが、ラップを重ねるごとに点数を減らして3ラップめには14点。中堅の選手の1ラップ目の成績と同等の点数まで詰める事が出来た。
己を知り、セクションの攻略法を学べば十分に世界で戦えるポテンシャルがある。そう確信できる結果と言える。
ユースゲームで顔を合わせた各国の選手達からは、「トムは来てるか?」「トムはどこにいる?」と声をかけられる機会が多い。
彼の人柄もあるが、ライディングを評価されてこその事であろう。
今後の躍進が楽しみな選手の一人である。
明けて翌日、エリート20の決勝。朝から降り続いた雨で完全なウェットコンディションの中、競技がスタート。
今年から予選通過6名を2組に分けて、3名をグループとしてセクションをひとつずつ回っていくというシステムが採用された。
第1組が競技を終了し、寺井を含む第2組がスタート。それまでは止んでいた雨が競技中盤から激しく降り出し、第2組にとっては不利とも言える状況となった。
それでも、第2組で走ったスペインのムスティエレスが優勝しているので、状況を言い訳には出来ない。もちろん、寺井本人にもそんなつもりは無いであろう。
もしコンディションが違っても、これ以上の成績は望めなかったであろう。そう思わせるライディングであった。これまでの世界選手権を走った中の、最良の走りであった。
これで5位という成績が残せないのなら、身体能力で欧米の選手に劣る日本人には何のチャンスも無いと、そう思えるに十分な走りであった。
リザルトを振り返れば、ジュニアから上がりたてのライダーやこれまで名前を見かけなかった新興国のライダーが上位に名を連ねる。
技術はさらに磨かれてセクションの難易度も上がるであろう。
同等やそれ以上の日本人選手の活躍の為には、一層の努力と精進が必要になることは明らかである。何も変える事ができなければ、もう日本人選手が決勝を走る事は無いと予想される現況において、我々が進むべき確かな道標となる遠征であったと思う。
選手達と、彼らを現地で支えた同輩と家族に最高の賛辞を、そして今日までの彼らを育てた全ての環境に、それはもちろんひとりひとりの選手や愛好家、関係者の皆様に心からの御礼を申し上げてこの遠征記をしめくくろうと思います。
本当にありがとうございました。 (派遣選手団監督 岩佐賢一)
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